文部科学省は2026年度を「次世代校務DX」の検討・導入開始の目標年度に設定しています。GIGAスクール構想で整備した1人1台端末の第2期更新と時期が重なり、学校や教育委員会がクラウド移行を本格的に判断しなければならない時期がきました。
これまで閉域ネットワークで守られていた校務系データをクラウドへ移行するとなると、「児童生徒の個人情報をどう保護するか」「教職員のアクセス権限をどう設計するか」「卒業・転入時のデータをどう扱うか」という実務上の問いが必ず出てきます。本記事ではこれらに具体的な設計と運用手順で答えます。

学校データの機密性と分類
扱うデータの種類と機密性
文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和6年1月改定)では、学校が管理する情報資産を重要性分類Ⅰ〜Ⅲに区分しています。
| 分類 | 主なデータ例 | クラウド保存の条件 |
|---|---|---|
| 重要性分類Ⅰ | 要配慮個人情報(健康診断票、家庭環境調査票)、指導要録 | 多要素認証必須、強固なアクセス制御 |
| 重要性分類Ⅱ | 通知表、定期考査の採点結果、出席簿 | 多要素認証が望ましい、厳格なアクセス制御 |
| 重要性分類Ⅲ | 授業資料、学校だより、配布プリント | 一般的なアクセス制御 |
学校現場では、重要性分類Ⅰのデータが重要性分類Ⅲと同じフォルダに混在しているケースがあります。クラウドへ移行する前に、この仕分けを済ませてください。フォルダの設計は仕分けの結果で決まります。
学校特有のアクセス管理の複雑さ
担任教師は自分のクラスの成績データに常時アクセスできる必要がありますが、他のクラスのデータは見えないようにすべきです。管理職は全クラスのデータにアクセスでき、養護教諭は健康記録にのみ特別な権限を持ちます。
問題は年次の更新です。毎年4月の学年更新で担任が入れ替わると、アクセス権限の再設定が発生します。学期ごとに転入・転出がある場合も、その都度対応が必要です。
早稲田大学は5万人規模のユーザーを2人で管理しています。統合認証システムと教学システムを連携させ、アカウント作成・更新・削除を自動化したからです。この設計は小中学校の規模でも応用できます。
フォルダ構造の設計
学校向け基本フォルダ構成
データの種類と権限範囲を反映したフォルダ構成例です。
/学校共有/
├── 職員室共有/(全教職員)
│ ├── 学校だより/
│ ├── 年間行事計画/
│ └── 各種様式・書式/
├── 学年別/(学年所属教員のみ)
│ ├── 1年/
│ │ ├── 授業資料/
│ │ ├── 学年通信/
│ │ └── 行事記録/
│ └── 2年/(同構成)
├── 学級別/(担任・副担任のみ)
│ ├── 1年1組/
│ │ ├── 出席記録/
│ │ └── 所見メモ/
│ └── 1年2組/(同構成)
├── 管理職/(校長・教頭のみ)
│ ├── 指導要録/
│ ├── 人事関連/
│ └── 予算・経理/
└── 養護/(養護教諭・管理職)
└── 健康管理記録/
この構成のポイントは「学年別」と「学級別」を分けている点です。運動会の準備資料は学年の教員全員が見る必要があっても、特定クラスの児童の所見メモは担任だけが見るべきです。
教育委員会・学校間共有の設計
教育委員会が複数の学校を管理する場合、学校をまたぐデータ共有が必要になります。
/教育委員会/
├── 全校共通/(全学校の教職員)
│ ├── 通知・事務連絡/
│ └── 共通様式/
├── 各学校/(学校別フォルダ、校長・教頭のみ)
│ ├── A小学校/
│ └── B中学校/
└── 管理/(指導主事・教育長)
├── 統計データ/
└── 視察・報告/
転校する児童のデータを送受信する際は、パスワード保護と有効期限を設定したダウンロードリンクを使います。メールへの添付や、期限なしのリンク共有は避けます。
個人情報保護の実装
卒業・転入・退職時のデータ処理
「GIGAスクール構想でクラウドに蓄積した児童のデータは、卒業後どうすべきか」について、文部科学省は各自治体・学校の判断に委ねています(GIGA HUB WEB)。
実務的な対応例を挙げます。
卒業時
- 在学中のデータを圧縮アーカイブ(ZIP)として保存し、学籍管理フォルダへ移動
- 学習活動のデータは卒業から5〜7年程度の保管期間を設定
- 要配慮個人情報を含むデータは指導要録の保存年限(5年または20年)に準じる
転入・転出時
- 転出先への引き継ぎデータは、パスワード保護のダウンロードリンクを発行し、電話等の別経路でパスワードを伝える
- ダウンロードを1回限りに設定し、受け取り確認後に手動でリンクを削除
教職員退職時
- 退職日にアカウントを即時停止
- 退職者が作成した共有リンクも一括で無効化
- 職員室共有への書き込み権限を削除し、閲覧のみに変更してから最終的に削除

多要素認証と端末認証
文部科学省ガイドラインでは、重要性分類Ⅱ以上のデータをパブリッククラウドで扱う際に「多要素認証が望ましい」としつつ、教育現場の実態を踏まえて「端末証明書と知識認証・生体認証の組み合わせも許容する」としています。
GIGAスクール端末のMDM(モバイルデバイス管理)と組み合わせた端末認証が現実的です。学校支給端末からのアクセスは許可し、私有端末からは制限する設定で、セキュリティを保ちながら教職員の利便性も確保できます。
HStorageのWebDAVおよびSFTPへのアクセスには、各クライアントツール側でもパスワードによる認証を設定できます。GIGAスクール端末にWebDAVマウントを設定しておけば、端末からのアクセスは認証済みとして扱えます。
学校での実用的な活用例
授業資料の配布と回収
授業資料をアップロードして共有リンクを配布するのが、最も基本的な使い方です。
授業資料フォルダ
├── 5月14日_理科_植物の観察.pdf
├── 5月15日_算数_分数の計算.pdf
└── 提出課題/(生徒からの提出物)
├── 1組_田中太郎_観察記録.pdf
└── 1組_鈴木花子_観察記録.pdf
課題の提出先として書き込み専用のリンクを発行すれば、生徒がアップロードはできても他の生徒のファイルは見えない設定にできます。
校外学習・行事の写真管理
遠足や運動会で撮影した大量の写真データは、クラウドストレージに一括アップロードしてから保護者への共有リンクを発行します。
- ダウンロード期限を設定(例:行事後2週間)
- パスワードを設定し、学校だよりや連絡帳で別途通知
- 期限後は自動でアクセス不可になるため、管理の手間が減る
1枚あたり5〜10MBのJPEG画像が数百枚あっても、HStorageであれば大容量の一括アップロードに対応しています。
年度末・年度初めの引き継ぎ
3月末〜4月初めは引き継ぎが集中します。紙の引き継ぎ資料をPDF化してクラウドに置き、新担任に閲覧権限を付与するだけで、紛失リスクがなくなり印刷コストも下がります。
引き継ぎが完了したら、前担任のアクセス権限を管理画面から外します。数クリックで済みます。
GIGAスクール第2期に向けた準備
クラウドストレージを選ぶ際は「GIGAスクール端末とどう連携するか」「既存の校務支援システムと併用できるか」を確認してください。
HStorageはWebDAV対応のため、WindowsやmacOS、Chromebookのファイルアプリからネットワークドライブとしてマウントできます。GIGAスクール端末からも、ブラウザや専用アプリなしにファイルの閲覧・保存ができます。
ユーザー数ではなく使用ストレージ容量に応じた課金なので、全校の教職員と管理職を登録してもコストはデータ量に比例します。年度ごとに教職員数が変動しても料金は変わりません。