建築設計事務所が扱うCADデータやBIMモデルは、1プロジェクトで数十GBから数百GBに達します。NASを社内に置いて管理してきた事務所の多くが、容量不足・リモートアクセスの遅さ・バックアップ運用の煩雑さという三重苦に直面しています。
建築データはなぜ「重い」のか
AutoCADの2D図面ファイル(DWG形式)は数MB程度ですが、RevitやArchiCADのBIMモデルは1ファイルで数GB、プロジェクト全体を合算すると100GBを超えるケースも珍しくありません。
ファイル容量の内訳はおおむね以下のとおりです。
| ファイル種別 | 代表的な容量 |
|---|---|
| 2D CAD図面(DWG) | 1〜50MB |
| BIMモデル(RVT/PLN) | 500MB〜5GB |
| パース・3Dレンダリング | 100MB〜2GB(1枚) |
| 現場写真(工程管理) | 5〜15MB(1枚) |
| 動画ウォークスルー | 1〜20GB |
設計が進むにつれてファイルは増え続け、完成後も数年単位で保管する必要があります。確認申請や瑕疵担保責任の観点から、竣工後10年以上データを保存する義務が生じるプロジェクトもあります。
NASだけでは足りない理由
多くの設計事務所は、社内NASに設計データを集約してきました。しかし、この運用は次の問題を起こしがちです。
容量の天井が低い。NASの容量が逼迫すると、ハードウェアの増設や入れ替えが必要になります。費用も手間も、予算に収まらないことがあります。実際、ある土木コンサルタント会社は45台ものNASを運用していたと報告しています。
リモートアクセスが遅い。VPN経由でNASに接続すると、大容量BIMファイルのダウンロードに時間がかかります。在宅勤務や出張先での作業に支障をきたす。
バックアップが属人化する。担当者が手動でバックアップを取る運用では、作業漏れやHDD故障時のデータ消失リスクが残ります。
施主・協力事務所への共有が手間。USBメモリや宅ファイル便のような手段は、ファイルサイズの制限や情報漏えいリスクが伴います。

クラウドストレージが解決できること
クラウドストレージへの移行で、これらの課題を一括して解消できます。
1. 大容量ファイルのアップロード上限
クラウドストレージを選ぶ際に最初に確認すべきはファイル1件あたりの上限容量です。BIMモデルや動画ウォークスルーは1ファイルで数GBに達するため、上限が数百MBのサービスでは運用できません。
HStorageは有料プランで1ファイル最大100GBまでアップロードできます。Revitの大規模BIMモデルや4Kウォークスルー動画も、分割せずそのままアップロード可能です。
2. WebDAV・SFTPでCADソフトと連携
HStorageはWebDAVとSFTPに対応しているため、設計ソフトや自動化スクリプトから直接ファイルを書き出せます。
典型的なワークフローは次のとおりです。
① RevitやArchiCADで作業 → WebDAV経由でHStorageに自動保存
② 図面が確定したら「納品フォルダ」を作成し施主にURL共有
③ パスワードとダウンロード期限を設定して安全に渡す
④ 施工会社からの現場写真も同じフォルダに集約
VPNを使わずブラウザやWebDAVマウントでアクセスできるため、リモートワーク中の所員も自宅から快適に作業できます。
3. 施主・施工会社への安全な共有
BIMデータや図面を外部に渡すとき、担当者が一番悩むのは「送ったのに受け取っていないと言われた」という行き違いと、「誰でも見られる状態になっていた」という情報漏えいの二点です。
HStorageの共有リンクはパスワード設定・有効期限・ダウンロード回数制限に対応しています。施主がダウンロードした回数をこちらで把握できるため、受け渡し確認のやり取りを省けます。
建設業では協力会社や施主など多くの関係者が同じデータにアクセスする場面があります。フォルダ単位の共有URLを発行すれば、都度ファイルを再送する手間が省けます。
4. バージョン管理で「最新版」の混乱を防ぐ
設計は何度も修正が入ります。「最終版」「最終版_修正」「最終版_決定」のようなファイル名の増殖は、どのファイルが本当の最新かわからなくなる原因です。
クラウドストレージの自動バージョン管理を使えば、同じファイル名のまま更新履歴を保持できます。誤って古いデータで施工図を作成してしまうリスクを大幅に減らせます。

実際の導入ステップ
クラウドストレージへの移行は一度に全部やろうとすると失敗します。段階的に進める方が現実的です。
ステップ1:新規プロジェクトから始める
進行中のプロジェクトはNASのまま管理し、新しく受注したプロジェクトからクラウドストレージを使い始めます。既存データの移行作業が不要なので、リスクを最小化できます。
ステップ2:フォルダ構成を統一する
クラウド移行のタイミングで、フォルダ構成のルールを先に決めます。以下の構成は設計実務で使われている標準的な例です。
プロジェクト名/
├── 01_基本設計/
│ ├── 図面/
│ └── BIMモデル/
├── 02_実施設計/
│ ├── 図面/
│ ├── BIMモデル/
│ └── 確認申請/
├── 03_施工/
│ ├── 現場写真/
│ └── 施工図/
└── 04_竣工/
├── 竣工図/
└── 引渡書類/
メンバーが増えてから構成を変えると全員に影響が出る。最初の一週間で決めてしまうのが得策です。
ステップ3:外部共有のルールを決める
施主・施工会社・監理者など、アクセス権限の範囲とパスワードの受け渡し方法を社内でルール化します。共有リンクのパスワードはメールと別経路(電話やチャット)で送るのが基本です。
費用対効果の試算
NAS運用とクラウドストレージのコストを比較すると、初期費用と維持費用の性質が異なります。
| 項目 | NAS運用 | クラウドストレージ |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数十〜数百万円(機器購入) | ほぼゼロ |
| 月次費用 | 電気代・保守費(変動) | サブスクリプション(固定) |
| 容量追加 | 機器増設が必要 | プランを変更するだけ |
| リモートアクセス | VPN設備が別途必要 | ブラウザで即アクセス |
| 障害対応 | 担当者または業者対応 | サービス側が対応 |
5名規模の設計事務所でNASを更新するたびに100万円前後のコストがかかっていたケースが、クラウドに移行することで月数千円〜数万円の固定費に落ち着いたという事例は複数あります。
HStorageが建築設計事務所に向いている理由
HStorageはWasabiの日本国内サーバーにデータを保管するため、国内データ保管を要件とする案件でも使えます。UIは日本語で、ITに詳しくない所員がダッシュボードを開いてもすぐに操作できる設計です。
WebDAVとSFTPの両方に対応しているため、RevitやArchiCADとの連携で詰まる場面はほぼありません。1ファイル100GBまで対応しているので、大規模BIMモデルや動画ウォークスルーも追加設定なしでアップロードできます。
建築設計の業務フローに合わせてフォルダ共有・権限管理を設定でき、チーム全体で使うファイルサーバーの代替として機能します。無料プランから始めて、プロジェクト単位でフォルダを作りながら使い勝手を確かめてみてください。